LLPとは
LLP(有限責任事業組合)とは、Limited Liability Partnership(有限責任会社)の略称で、創設的な連携や、共同事業の促進・振興のために導入された制度です。
LLPは元々、1991年にアメリカで誕生し、2001年にはイギリス、2005年にはシンガポール等が続き、日本でも2005年の8月にLLP法が施行され、経済産業政策局の統計によれば、平成19年12月時点での設立件数は2661件となっており、これから積極的に活用されていく組織形態だといえます。
LLP制度の導入によって、研究開発や事業促進のためのジョイント・ベンチャーの形成、産学連携の推進、高度な専門職などの人的資源の活用が期待されています。
ということで、ここ最近にわかに注目を浴びてきているのが有限責任事業組合(LLP)と呼ばれる新しい組織形態なのです。
有限責任事業組合(LLP)のメリット
間接有限責任であること
組合に出資をしたお金の範囲内でのみしか責任を負わない間接有限責任(=会社の株主⇔自営業者は直接無限責任)なので、金融機関からの借入等で、出資者自らが保証人にでもなっていない限りは組合の負債に対しては個人としては責任を負いません。
組合員は2人~、出資額は2円~でよい
LLPを構成する人達のことを、「組合員」または「構成員」と呼びます。LLPの設立には、最低2名以上の組合員が必要です。また、組合員はそれぞれ最低1円以上の出資をしなければなりません。
組合員の同意で自由に運営可能(内部自治の徹底化)
株式会社では、原則として、所有している会社の株式の割合に応じて発言権があるのに対し、LLPは出資額には左右されず、組合構成員個々人に平等な発言権があります。
利益配分にしてみても、2名でLLPを設立し、出資割合がAさんが1に対して、Bさんが9であったとしても、利益が出た場合の分配は、折半したり、Aさんに9、Bさんに1といった割合を定めることもできます。
このようにLLPでは、法律による制約が少なく、組合員同士の合意に基づく内部自治の原則を特徴としています。
誰にどれだけの意思決定権を与えるかについては自由に決める事が可能です。
故に、株式会社と比べると柔軟かつ迅速な経営を行う事が可能とされています。
課税方式 (構成員課税=パススルー課税)
これがLLPの最大のメリットとも言われていますが、株式会社は会社ですので企業会計基準が適用され、会社に課税されますが、LLPは組合のため、パス・スルー課税方式といって、組合員個人に対して直接課税されます。
法人では、法人と株主(または社員)に課税されるので、実質二重に課税されることになりますが、LLPの場合は組合員に直接課税されるだけです。
また、LLPが損失を計上した場合、各組合員は、その損失をLLP以外の所得と通算することが出来るので、所得税を安く抑えることも可能となります。
しかし、認められている損失の計上は、LLPに出資した額までで、例えば100万円の出資であれば、100万円分の損失までしか認められません。
設立時、運営時のコストが安い
- LLP設立に必要となる費用(※資本金,専門家への報酬は除く)
株式会社 | LLP | |
---|---|---|
公証人の定款認証手数料 | 5.2万円 | 不要 |
定款に貼る印紙代 | 4万円 | 不要 |
商業登記の登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
合計額 | 242,000円 | 60,000円 |
株式会社に比べ、約18万円も安く設立できてしまいます。
決算の公告費用がかからない
LLPは株式会社と異なり、各期ごとの決算公告をする義務はありません。
公告費用は、一般の方は殆ど目にすることはない官報への公告で約6万円かかります。
自社のホームページでの広告も可能で、この場合はコストこそかかりませんが、貸借対照表の全文を5年間もの長期にわたって掲載し続けなければならないので相当の手間隙です。
役員の変更登記に係る費用が安く済む
株式会社では役員に任期があるので、任期ごとに役員に変動がなくても役員変更登記をしなければなりません。
一方、LLPでは組合員の任期は無期限ですので、任期切れによる組合員変更登記の必要性はありません。
有限責任事業組合(LLP)のデメリット
会社にお金を出さずに役員にはなれない
LLPでは、原則として「出資者=組合員」となります。つまり、LLPでは原則として各組合員(出資者)が業務執行権限を有します(ただし定款で一部の組合員に対し業務の一部のみを執行する業務執行組合員を定めることも可能です)
この点、所有と経営の分離を建前とする株式会社とは異なります。
出資だけをして経営に参加しない、業務の一部を執行しない組合員は認められますが、出資をしないで経営に参加すること及び出資だけをして業務を全く執行しない組合員は認められていません。
対外的な信用度は株式会社より見劣りする
LLPは組合なので、法人格がありません。
制度自体がまだ新しいので、世間の知名度は株式会社に比べてまだまだ低いです。
しかし、実力で勝負できるようなノウハウやアイディア、社会的な信用が既にある人、企業のパートナーシップなら、ほとんどマイナス要因とはなりません。
許認可取得の主体にはなれない
建設業や不動産業といった、いわゆる行政上の許認可事業の許可や免許をLLPという組織としては取得することはできません。
ただし、各組合員個人(または法人)で許認可を取得しておけば、LLPでその事業を行うことは可能です。
税金関係
LLPで得た利益は、予め決めてある損益分配の割合に従って、各組合員に配分(パス・スルー)され、各組合員の所得として課税されます。
組合員が個人の場合には「所得税」が、法人の場合には「法人税」が、LLPの事業以外から得たものと合算されて課税されることになります。
その他、従業員を雇い入れた場合には給与を支払うことになるので、源泉所得税の納付義務が生じるのは株式会社と同じです。
労働・社会保険関係
従業員を1人でも雇い入れたら、労働保険(雇用保険・労働者災害補償保険)への加入が必要となります。
また、5人以上の従業者を雇い入れたら、適用事業所として健康保険・厚生年金保険に強制加入となります。
公的保険の加入義務の取り扱いは、株式会社の場合と同じになっています。
LLCかLLPかの分水嶺
LLPは信用や能力を前面に出す事業、期限付きのプロジェクト、ハイリスクハイリターンな共同事業等に向いています。一方、LLCは会社形態であり、安定的な収益を上げて、継続することを目的としております。
長期間の事業の継続を考えておられるならLLC、LLPには存続期間の定めがあることから、将来的な解散を視野に入れたビジネスモデルであればLLPが適しているといえるでしょう。