新規独立起業・法人化(法人成り)に際して考慮すべき事柄
既に個人事業を営んでおられる方は格別として、「独立起業」といっても様々な法律上で定められた手続やビジネスにおける準備や計画が必要となります。
あなたの得意とされる大好きなビジネスだけに専念できるわけではありません。
事業によっては行政庁への許認可の手続が必要な業種もありますし、創業時、創業後も様々な法律上の手続が課せられています。
個人で始められるのか法人で始められるのか
法人の場合どのような会社形態が適しているのか
創業にあたり行政の許認可が必要とされている業種なのか
十分な事業計画は立てられているのか
当分の間の事業資金は十分に確保できているか
労働保険・社会保険、人を雇う場合の手続について
煩雑な税務処理はどのようしていくのか
新規で会社を作るのは、意外と本業以外のことで時間と労力を割かれてしまいます。
個人事業主か法人の社長か
個人事業で既に事業を営んでおられる方は格別として、新規で起業する際の検討事項のひとつに、「個人事業」か、それとも「法人事業」か、どちらかを選択するかということがあります。
個人事業の場合、定款を作ったり法務局への登記は不要ですので簡単に始められます。一方、法人の場合は様々な手続きがありますが、会社法の改正により比較的簡単に会社を作れるようになっています。
新会社法の施行により会社設立が容易になったわけですから、今なら法人として始める絶好のチャンスだともいえます。ただし、事業の先行きというのは結局のところ誰にも分かりません。
ですから、まず手軽に始められる個人事業者として独立し、事業が軌道に乗った段階で会社を設立する「法人成り」を視野に入れてもいいかもしれませんが、法人をつくることが簡単になった今は、最初から法人としてスタートしても大きなデメリットはないといえます。
個人事業 | 法人事業 | |
---|---|---|
開業資金 | 事業開始に必要な費用のみ | 定款認証・登記費用等の諸経費が必要となる |
会社設立手続 | 自分で簡単にできる | 煩雑で時間もかかる |
社会的な信用 | 法人に比べると劣る | 個人よりは高い |
事業に対する責任 | 全財産をもって無限に責任を負う | 会社に出資した分だけ責任を負う |
事業内容の変更 | 自由にできる | 定款変更・登記等 |
税務処理 | 法人に比べると簡易 | 複雑なため、会計記帳代行サービスや税理士の利用が一般的 |
経営者の給料 | 経費として認められない | 経費として認められる |
接待交際費 | 無制限に認められる | 資本金の額により制限あり |
税金 | 5~40% | 18~30% |
社会保険 | 5人以下は任意加入 | 強制加入 |
どのような法人形態があるのか
一言で法人と言っても、様々な形態の運営方法が異なる法人が存在します。会社を作る趣旨・目的に照らし合わせ、一体どのようなタイプの法人で事業を展開するのが良いのかについて十分に検討の余地があります。
法人格 | 一般社団法人 | NPO法人 | 株式会社 | 合同会社 |
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事業内容 | 公益事業&収益事業 | 17の特定非営利事業 | 何でも可 | 何でも可 |
設立手続 | 設立登記のみ | 所轄庁の認証+設立登記 | 設立登記のみ | 設立登記のみ |
法人設立費用(最低額) | 15万円 | 0円 | 24万円 | 6万円 |
設立時資金 | 不要 | 不要 | 1円~ | 1円~ |
設立者数 | 2人以上 | 10人以上 | 1人以上 | 1人以上 |
役員数 | 理事は1人以上 | 3人以上 | 取締役は1人以上 | 業務執行社員は1人以上 |
代表者の肩書 | 代表理事 | 代表理事 | 代表取締役 | 代表社員 |
監事数 | いなくてもよい | 1人以上 | 監査役はいなくてもよい | 規定なし |
所轄庁 | なし | 都道府県庁または内閣府 | なし | なし |
監督 | なし | 都道府県庁または内閣府 | なし | なし |
許認可等 | なし | 認証 | なし | なし |
設立難易度 | やさしい | 普通 | やさしい | やさしい |
設立期間 | 2~3週間 | 3~6ヶ月 | 2~3週間 | 2~3週間 |
公益性への信頼度 | 全くなし | ある程度はあり | 全くなし | 全くなし |
税制優遇 | 課税・非課税で区分 | 収益事業のみ課税 | まったくなし | まったくなし |
法人税率 | 18~30% | 18~30% | 18~30% | 18~30% |
寄附金優遇 | 課税・非課税で区分 | なし | なし | なし |
事業報告 | なし | 毎年、所轄庁に事業報告あり | なし | なし |
法人格取消 | なし | 認証取消で解散 | なし | なし |
許認可について
何らかの事業を新たに始める際には、国または地方自治体等の許認可を得ることが必要な場合があります。許認可については各種の法律ごとに規制対象となる業種が規定され、許認可を得ることが事業を開始できる要件となっています。
許認可を得ないままで営業を開始すると、刑事罰である懲役・罰金や行政罰である過料に処せられることになります。
許認可には大きく分けて、①許可、②認可、③届出、④登録、⑤免許の5つがあります。
区分 | 意味 | 具体例 |
---|---|---|
許可 | 法令によって一般的に禁止されていることを、特定の場合に解除すること | 建設業、飲食業 |
認可 | 行政などが、その行為を補充して法律上の効果を完成させること | 居宅介護事業 |
届出 | ある行為を行うにあたって、行政に対して、事業者がいていの事項を通知すること | 貸金業、理・美容業 |
登録 | 登録簿に記載されることで事業を行うことができる | 金融商品取引業 |
免許 | 国民が本来持っていない権利等を与える行為 | 不動産業、酒類販売業 |
独立開業にあたっては、行政上の許認可が必要となるのかどうかにつき、調査をした上で計画を立てなければなりません。
一般的には多くの人にできそうな業種ほど許認可を得るのは簡単で、逆に、高度な技術が要求される業種や公益性が高い業種ほど許認可を得ることが難しい傾向にあります。
多くの時間と金銭と労力を費やして起業の準備をされても許認可が
得られなければ全ては水の泡となってしまいます。
難易度が高いとされている許認可については、事前に行政の窓口や経験者や行政書士等に相談するなどして、事前に備えをしておくことが必要不可欠です。