LLCとは
LLC(合同会社)とは、Limited Liability Company(有限責任会社)の略称で、合名会社、合資会社とともに持分会社と呼ばれています。
LLC(合同会社)とは、初耳かもしれません。平成18年5月1日に施行された新会社法で規定された、新しい会社の形態です。
LLCは元々、1970年代後半にアメリカで誕生し、現在では80万社以上のLLCが設立されており、株式会社に匹敵するほど活用されている会社形態なのです。
このようにLLCが積極的に活用されるのは、メリットがあるからですが、日本のLLCはアメリカ版とは少し違いがありますので、日本におけるLLCの活用について考えてみましょう。
新会社法では有限会社が新設できなくなりました。有限会社は組織運営のしやすさと設立費用の安さで、新規起業に人気のあった会社形態であり、特に株式会社に比べ、少ない資本で会社が出来た点は大変大きかったと考えます。
新会社法では、従来の有限会社のような組織形態の株式会社(取締役一人の会社など)をつくること自体は可能になりましたが、あくまで株式会社ですので、
1 毎年の決算公告がいる
2 役員の任期満了時には必ず変更登記をしなければならない
3 初期設立費用が最低でも約24万円はかかってしまい、高額である等のデメリットがあります。
ということで、ここ最近にわかに注目を浴びてきているのが合同会社(LLC)と呼ばれる新しい会社形態なのです。
合同会社(LLC)の特徴
間接有限責任であること
会社に出資をしたお金の範囲内でのみしか責任を負わない間接有限責任(=会社の株主⇔自営業者は直接無限責任)なので、金融機関からの借入等で、出資者自らが保証人にでもなっていない限りは会社の負債に対しては個人として責任を負いません。
社員(出資者)は1人~、出資額は1円以上でよい
最初は個人で小さくビジネスを始めたい方、または既に自営業を営まれている方にも適した制度です。
会社規模が大きくなれば、株式会社に組織変更することも可能です。
人的多数決主義
株式会社の場合は多くの出資をした株主(出資者)の意見が反映されますが、合同会社の場合は、出資比率に関わらず、個々の社員(出資者)の意見が色濃く反映されます。
例えば株式会社の場合は、株式の80%を所有している人が8割の議決権を持つのに対して、合同会社の場合は1人1票の原則が貫かれているからです。
誰にどれだけの意思決定権を与えるかについては自由に決める事が可能です。
故に、株式会社と比べると柔軟かつ迅速な経営を行う事が可能とされています。
会社にお金を出さずに役員にはなれない
LLCでは、原則として「出資者=経営者」となります。つまり、合同LLCでは原則として各社員(出資者)が業務執行権限を有します(ただし定款で一部の社員のみを業務執行社員と定めることも可能です)
この点、所有と経営の分離を建前とする株式会社とは異なります。
出資だけをして経営に参加しない、業務を執行しない社員は認められますが、出資をしないで経営に参加することは認められていません。
会社設立時、運営時のコストが安い
- 会社設立に必要となる費用※資本金,専門家への報酬は除く
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
公証人の定款認証手数料 | 5.2万円 | 不要 |
定款に貼る印紙代 | 4万円※ | 4万円※ |
商業登記の登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
合計額 | 242,000円 | 100,000円 |
当事務所では、電子定款認証に対応しておりますので印紙代の4万円は不要となります!
株式会社に比べ、約14万円も安く設立できてしまいます。
- 決算の公告費用がかからない
LLCは株式会社と異なり、各期ごとの決算公告をする義務はありません。
公告費用は、一般の方は殆ど目にすることはない官報への公告で約6万円かかります。
自社のホームページでの広告も可能で、この場合はコストこそかかりませんが、貸借対照表の全文を5年間もの長期にわたって掲載し続けなければならないので相当の手間隙です。
- 役員の変更登記に係る費用が安く済む
株式会社では役員に任期があるので、任期ごとに役員に変動がなくても役員変更登記をしなければなりません。
一方、LLCでは社員の任期は無期限ですので、任期切れによる役員変更登記の必要性はありません。
利益の配当が自由
営業上の利益が出た場合、株式会社の場合は貸借対照表の資産から負債を差し引いた額である純資産額が300万円未満の場合には、株主へ利益配当をすることが出来ないといった制限があります。
一方、LLCの場合はそのような制限はなく、また、定款で規定することにより、社員(出資者)の出資比率と異なる割合での利益配当が可能です。
対外的な信用度は株式会社より見劣りする
新会社法によって新設された会社形態ですので、世間の知名度は株式会社に比べてまだまだ低いです。
しかし、実力で勝負できるようなノウハウやアイディア、社会的な信用が既にある個人事業主なら、ほとんどマイナス要因とはなりませんし、会社形態なので、自営業者よりは信用は得られます。
欧米では既にメジャーな存在であるLLCも、日本では始まったばかりの制度なので社会に浸透するまではもう少し時間がかかりそうです。
税金関係
LLCは、株式会社と同様に、法人税、法人事業税、法人住民税、消費税がかかりますが、資本金が1,000万円未満の場合は、設立第1期及び第2期の消費税が免除となります。
ですので、この免税の制度を最大限活用できるように、通常は設立月から一番遠い月を決算月にします。
ただし、法人住民税の均等割という税金が、利益が出ていない場合でも年間最低7万円課税されます。
労働・社会保険関係
LLCはれっきとした法人なので、社員1人だけの組織でも社会保険(厚生年金・健康保険)への加入義務が課されています。
また、従業員を1人でも雇い入れたら、労働保険(雇用保険・労働者災害補償保険)への加入が必要となります。
公的保険の加入義務の取り扱いは、株式会社の場合と同じになっています。
株式会社かLLCかの分水嶺
LLCの社員(出資者)の議決権は、1人1票が原則なので、社員(出資者)が多い場合には、意思決定が内部分裂によりうまくいかないケースが出てきてしまいます。
1人、あるいは気心の知れた仲間同士数人の少人数でスタートするのであれば、内部分裂の危険性もあまり心配する必要性はないので、会社名を前面に押し出すような業種ではなく、対外的な信用度もさほど気にするでもなく、将来的にも少人数でのスモールビジネスを展開の予定で、会社設立当初の費用を低く抑えたいのであれば、LLCが適しているでしょう。
LLCかLLPかの分水嶺
LLPは信用や能力を前面に出す事業、期限付きのプロジェクト、ハイリスクハイリターンな共同事業等に向いています。一方、LLCは会社形態であり、安定的な収益を上げて、継続することを目的としております。
長期間の事業の継続を考えておられるならLLC、LLPには存続期間の定めがあることから、将来的な解散を視野に入れたビジネスモデルであればLLPが適しているといえるでしょう。